40代女性 薄毛

父がつくる水羊羹

" もうとっくの昔に亡くなっていますが、父は和菓子をつくるのが上手でした。
若い頃上京する前に、和菓子屋で少しだけ働いたことがあったそうです。
まだ戦後の空気も抜けきれない物資の乏しい片田舎だったことから、和菓子とはいっても、ふかしまんじゅうやすあま、水羊羹がほとんどで、
せいぜい黄身しぐれくらいの種類だったようです。

 

 それでも、饅頭の皮にはとろろ芋を擦って入れたり、水羊羹に使う小豆は、煮てから潰して何度となく水をくぐらせてさらすという、
手間がかかる本格的なさらしあんつくりを、休日には面倒くさがることなく淡々とこなし、私達子供たちに食べさせていました。
最近の世代に人達から見れば、さらし餡程小豆の栄養を水に流して捨ててしまうとんでもないような作り方が、
和菓子の基本であることを、おそわることなく知っています。

 

 水羊羹は懐かしく思う和菓子の一つですが、買うといつも高いと思ってしまいます。
休日自宅の車を黙々と掃除していると、近所に住む高齢の方々からお父さんに似ているな、と言われるようになってきました。
容姿や性質は以前から似たところはありましたが、年齢を経て雰囲気が似てきたのかも知れません。
ですが、私は手間がかかり過ぎる水羊羹はつくらず、おしるこ止まりです。
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